建築士コラム

建築とデザイン

角南 公淑

インテリアの空気感をつくる

空間の表層だけでなく、その背景や時間・ストーリーを思考することで、その場所に訪れた人々の五感に伝わる「空気感」が生まれると考えています。
弊社のオフィス移転に伴いデザインしたエントランスの例をご紹介します。
ひとつひとつの素材に向き合う
訪問者を招くエントランスには‶導かれるように気持ちを切り替えられる佇まい″をつくろうと考えました。曲線のある壁側の床は砂利とライン照明によって室内へと導く設えとしています。

砂利は、香川県の庵治・牟礼両町の境に位置する五剣山(ごけんざん)より採掘される花崗岩『庵治石』を採用。最大の特徴は、石の表面に「斑(ふ)」と呼ばれる幻想的な二重のかすり紋様が現れ、奥行きのある優美さを感じさせる石目があります。
もう一種、床材として『ナラ』を採用。ナラは広葉樹の中でも硬い木です。しかし、土足で人が行き来するオフィスの床材としては耐久性に欠ける可能性があります。

そこで塗膜によるコーティングが考えられますが、自然素材本来の風合いや感触を残すため、歩行頻度の高いオフィスや商業施設で採用がされてきているボナ社製のツヤ消しウレタンで、自然に古美びたようなシルバーと白の間の色目で塗装しました。
‶時間による変化″という演出を添える
壁は『木毛セメント板』を採用。木毛セメント板は‶燃えない建材″としてドイツから輸入され、震災での復興物資として広く使用されるようになりました。下地材としてのイメージが強いですが、細長く削り出したリボン状の木材をセメントペーストで圧縮した成型板の特異な表情がユニークです。

そして、窓からの光の表情と共に壁の表情も刻々と変わっていきます。アプローチを通る時間帯によっての変化を感じてもらえるようにしています。
このような佇まいや素材感で空間を構成することで、弊社のデザイン性を感じてもらえるような空気を考えました。弊社にご用の際は、ぜひ異なる時間で訪れてみてください。昼と夜それぞれの空気感を楽しんでいただけます。

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