建築士コラム

代表の想い

松永 康宏

旅先での出会い

ここ15年ぐらい毎年ゴールデンウィークは妻とリゾート地をめぐる旅をしている。小学生の頃スイミングスクールに通っていたので、水泳が好きだからもあるが、なんと言っても海には建物がない。建物があると直ぐに仕事モードになってしまい、非日常的な空気が損なわれるのが理由。日常が仕事のことばかりなので、妻としては建物をなくして2人で過ごす時間を大切にしたい想いもある。いずれにしてもお互いに良い空気感で入れるのがリゾート地。

15年間、毎年リゾート地に行っていると(とはいえコロナ禍の2年は行っていない)過ごし方が小慣れてくる。私たちの旅は観光(ツアー:ご当地の観光パッケージ)と、旅(ジャーニー:ノープランで偶然に身を委ねる)のちょうど中間ぐらいの過ごし方である。「偶然の要素が入りこむスキマ」みたいなのものが、旅程に組みこまれている。
今回は沖縄をめぐる旅であった。初日の夕食に訪れた那覇市の国際通り近く、約20軒の飲食店が立ち並ぶ屋台村で泡盛を数種類飲んだ。何も泡盛らしい味わい深いものだったが中でも「暖流古酒」が今までの泡盛の印象を変えた。炭酸水で割るとまるでウィスキーのハイボールのような味わいになる。鼻に抜けるほのかな甘みは、米からなる泡盛ならではだと感じた。泡盛の原料はタイ米。ひと昔前に日本米が高額になったとき、安価なタイ米に原料を変えたそうだが、タイ米の方が粘り気がなく麹がつきやすく、良い泡盛になったのを機にタイ米が主流になったという。
滞在中はダイビングやビーチでゆったりとした時間を過ごした。最終日に時間が空いたので、初日に訪れた屋台村入り口にある「村咲」で夕食をした。若々しく沖縄らしい顔つきの男性店員とカウンターを挟んで会話を楽しんだ。そこで紹介された泡盛は「暖流古酒」よりさらに琥珀色した泡盛「八重泉(ヤエセン)」。ラベルの表記は泡盛でなくリキュールになっており、もはや泡盛かウィスキーか境界線が曖昧な飲み物となっていた。

彼曰く、琥珀色の程度で表記が異なり、透明であれば泡盛、ある基準(個人的な想像だが暖流古酒と八重泉の間が境界かも)で琥珀色が強ければリキュールになるそう。元々は「暖流古酒」を造っている神村酒造が当時、売れ行きが乏しかった泡盛を米軍に向けて約50年前に開発したオーク樽を使う酒造方法。ウィスキーやバーボンで利用されるオーク樽で熟成させることで、琥珀色した泡盛が生まれるそうだ。
新たな味わいで見事に人気を吹き返した泡盛。そして様々な泡盛の酒造メーカーが神村酒造へ訪れ、沖縄らしい大らかな気風から、余すことなく酒造方法を伝授し様々なメーカーから琥珀色した泡盛が発売された。その内の1つが八重泉酒造の「八重泉」。自分達だけに収めないで、地域の方へ貢献する姿。沖縄の方らしい大らかな温かみある話であった。偶然に訪れた場所、そして偶然の出会いからの発見。ここでしか味わえない思い出となった。

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