建築士コラム

建築とデザイン

水口 真希

民泊対応型共同住宅

再び「民泊運営を目的とする共同住宅」の相談が、増えてきたように感じています。2017年(平成29年)6月に「住宅宿泊事業法」が成立し、いわゆる「民泊」の制度ができました。新法ができることが分かった時点で、某事業主より「竣工時に民泊ができる共同住宅の設計。さらに、共同住宅でもホテルでも適法になる設計。」を求められ、幸運にも、自分がそのプロジェクトの担当をさせてもらえる機会を得ました。

最近、初めて関わった民泊対応型共同住宅と同等規模である、5000平米超かつ11階以上の民泊対応型共同住宅のご依頼を受けました。以前は、関係各所も、新しい法律の取り扱いが定まらなかった時期でしたが、今は、複数の事例があり、取り扱いも整備されてきている印象を受けました。
しかし、依然として、困難に感じたのは次の二点。
一点目は、民泊は、「既存建物の活用する」を前提といているため、建設中に法改正や取扱変更があった場合、事前打合をしていても現行法に訴求しなければならないということ。それは、誰がどう頑張ろうと担保できないため、賭けのようなものです。プロジェクト規模が大きければ大きいほど、その可能性は高まります。竣工するまで、ずっと法改正等がないかアンテナをはっているしかありません。

二点目は、消防法です。
共同住宅とホテルでは、必要な消防設備も、適用できる緩和規定も異なるためです。また、全館民泊利用するか、一部だけ民泊利用するかでも、必要な消防設備は異なります。少なくとも、どのような民泊運営をしたいかで、必要消防設備のパターンは大きく3つ考えられます。設計者によっては「好きなように運営したければ全館スプリンクラーを設置してください」で、まとめられてしまうかもしれません。それも1パターンとして間違ってはいないです。ただ、コストを抑えたいなら少しの制約を加えることで、他のパターン提示することも十分に考えられます。
上記二点を理解した上で、私が感じている民泊対応型共同住宅のメリットも二点あげておきます。
一点目は、共同住宅の方が部屋の中の規制が少ない。ホテルは、福祉対応客室以外も客室内の通路幅員の設置基準が変わり、広さ25平米の共同住宅より寝室の広さが取りづらくなっています。
二点目は、建築基準法上は「共同住宅」のため、共用廊下東の容積率緩和が適用できます。そのため、同じ容積対象面積でも部屋数を多く確保できる可能性があります。

大阪万博目的の観光客や、インバウンドの復活を見込んで、民泊対応型共同住宅を、新築で計画する方が増えているのかもしれません。メリット・デメリットを理解して、運営方法もきっちり計画して打合せしながら設計していくことが大事だと思います。
先日、社内部活「健康増進部」で、沖縄県で開催されたマラソン大会に参加しました。宿泊先は、お付き合いのある設計事務所が運営されている「民泊」でした。その土地に昔からある民家を少し改修して運営されている「民泊」だったので、土地柄のわかる面白い建築物でした。

快適さを求めるならホテル同等の民泊が良いと思いますが、その土地の文化を楽しむならその土地古来の民家を利用した「民泊」もいいものだと思いました。

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