建築士コラム

プロジェクトの足跡

松永 康宏

船の内装デザイン Vol.1

建築の技術や知識は様々な領域の仕事に転用できます。建築の設計はもちろんのこと、解体工事のコンサルティング、マンション管理のコンサルなどもラフトでは行っています。

その中で面白い仕事の話を頂きました。船の内装の仕事です。毎週海に出かけて釣りをするほどの趣味の方がおられ、3年前から計画して船を作っているとのことです。船の外形が出来てきたので内装デザインをして欲しいと依頼を頂きました。船の内装は初めてで素材や作り方などのイメージがつかないので、一緒に造船所に行くことになりました。
浦田造船の造船工場
造船所は佐賀県にある浦田造船です。なんと江戸時代から続く造船所。現在の浦田社長で14代目とのことです。

浦田造船の船の特徴はなんと言ってもスピードです。軽量化を図るためにFRPで作られており、全長70フィート級(21m)の船で巡航速度 時速35ノット(時速64km/h)トップスピードで時速49ノット(時速88km/h)。調べると海上保安庁の高速船で30ノット以上。戦艦大和は最高速度29ノットだったそうで、巡航35ノットの猛烈なスピードがわかります。今回の船は漁礁へいち早く到着し、長時間釣りを楽しむための船です。
※巡航速度とは経済的で安全な航行を行う速度

高速にするために船の幅は細く設計されています。そしてなんと言ってもの特徴なのは船首です。船首は刀のような形状で波を切るように走るため、波が高くても速度が落ちることなく航行できます。
メンテナンス中の70フィートの船
左は一般的な船の船首、右が浦田造船が作った船の船首
今回、造船している船は全長77フィート(23m)にもなります。キャビンは建築で例えると3LDK +フライングブリッジ(運転席)の間取りです。その他にもシャワー室、洗面所、トイレも備えてある船です。

そんな、ラグジュアリー漁船のテーマは以下の3点としました。

 ・シンプルラグジュアリー
 ・軽量化したマテリアル
 ・振動に耐える納まり

シンプルラグジュアリーとは華美なデザインではなく、海上で過ごす時間を友人などとリラックスできる空間を目指します。シンプルに海のような透明感あるデザインをコンセプトにしました。

軽量化したマテリアルとは、浦田造船の特徴であるスピードに影響の少ない軽量化されたマテリアルを選定します。

振動に耐える納まりとは、高速船であるこの船の中は、建築で例えると地震がいつも起こっている状況です。

浦田社長のお話では以前、建築の一般的なユニットバスで浴室を作ったが、強度がなかったため、1週間ぐらいでパネルが外れバラバラになったとのこと。その経験から今ではFRPの本体とつなげて作り、別のパネルで仕上げるそうです。

まさに船の形が見えて来たところ。これからいよいよ私たちの内装デザインの本番です。
キャビンを俯瞰する
キャビンの上階はフライングブリッジ(運転席)下階はLDKにあたるサロン
77フィート(23m)の船体に寝室3室とシャワールームがある。

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